知的ギフテッドの判断とWISC-Ⅳプロフィール
こちらの記事は、北海道でギフテッド・LD 発達援助センターをされている小泉雅彦先生よりご寄稿いただきました。
こちらの記事は基礎知識のため、当団体との関係性に関する上述の注意文は無視していただいて問題ありません。
ギフテッドの判断については,日本では標準化された尺度もないのが現状です。
アメリカでは,GRS(ギフテッド評定尺度)があり,
知的能力,学力,創造力,芸術的才能,リーダーシップ能力,動機づけ
の6つの尺度から構成されています。
WISC-Ⅳ理論・解釈マニュアルの臨床群研究の冒頭に
「知的ギフテッドとされる子どもたちは,知的機能,創造的思考・生産的思考,リーダーシップ,芸術能力で高い能力を示す
(Marland ,1972:Sparrow&Gurland,1998:Winner,2000)」
と述べられています。
尺度とほぼ一致ますね。
私が,知的ギフテッドと使っているのは,
日本においてギフテッド判定が可能なのは,WISC-Ⅳというツールを使って測れる「一般知的能力の高い子ども」
であるからです。
WISC-ⅣとGRSで相関をとったら,
リーダーシップ以外で高い相関が見られたという点から考え,
一般知的能力は他の才能とも高い相関を示すことを示唆しています。
今の段階で,我々がギフテッドを考える上でのツールになるのは間違いありません,
この先,「創造性,社会的能力,リーダーシップ,音楽的才能,美術的才能」を測る尺度が作られたら,
トータルで“ギフテッド”が判断されるようになるだろう。
狭義の知的能力と他の才能がどのように相関するのか,
今後の研究に期待することになると思います。
異端研の手元に,みなさんの協力で,この数年でデータがまとまってきました。
(一般知的能力指標:GAI≧130の25ケース)
25ケースの,
全検査IQ(FSIQ)FSIQ,言語理解(VCI),知覚推理(PRI),ワーキングメモリー(WMI)と処理速度(PSI),一般知的能力指標(GAI),認知熟達度指標(CPI)
の中央値と標準偏差についてまとめてみました。
全米ギフテッド協会NAGCのデータとの相関をとったら
r=.99,予想通り非常に強い相関が見られました。
異端研の知的gifted群データはかなり妥当性が高いと言えます。
FSIQ(132,8.36) VCI(137,10.9) PRI(127,10.4) WMI(120,15.5) PSI(107,15.8) GAI(141,6.21) CPI(111,14.9)
想定通り,g因子(一般能力)と負荷の高いVCI,PRI,GAIが高い値を示した。
「WMIとPSIの効果サイズはさほど大きくなかったが,その他の得点さは大きかった」
さらには
「ギフテッドは,より高度な言語理解や知覚推理の課題といった得意分野とし,とりわけ処理速度などの比較的不得意な分野との間にディスクレパンシーがしばしばみられる」
という内容を示唆するものでした
標準偏差を見るとVCIとPRIに比べWMIとPSIが大きいです。
それだけばらつきがあるといえます。
当然,VCIとPRIで構成されるGAIは,標準偏差が小さくばらつきが小さく,
WMIとPSIで構成されるCPIはばらつきが大きいと言えます。
CPIの低得点が,知的ギフテッドの生きにくさと直結している可能性がありありますね。
成人に関しては,WAIS-Ⅳが発売されたので,
より妥当性の高い判断がなされるようになっていくと思います。
個人的にも大人のデータを取ってみたいですね。