大人のADHDってなに? 特徴を知って上手な付き合い方を知ろう
今回の内容はギフテッドのことではありませんが、ギフテッドが持つ特徴に似た部分もあります。
このような症状に心当たりのある方は参考までご覧ください。
ADHDの子どもたちについての社会的認知度や理解は増えてきていますが、最近は子どもだけでなく大人でもADHD診断を受ける人が増えているといいます。
しかし子どもと違って大人のADHDはまださほど知られておらず、周囲の理解が得られず困ったり悩んだりする方も多いようです。
今回はこの「大人のADHD」について精神科医の井上智介先生に解説していただきました。
大人のADHDとは?
ADHDってなに?
ADHDはここ最近になって社会的にも医療的にも注目されるようになってきました。
日本語では注意欠如多動性障害と言われ、発達障害の1つに当てはまります。
最近はメディア等で「大人のADHD」と表現されることがありますが、ADHDを始めとする発達障害は生まれつきの疾患であるため、大人になってから始めてADHDに罹患するといったことはありません。
ADHDはなぜ起きるの?
ADHDは、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドパミンの機能障害が原因だろうとする仮説が有力ですが、根本的な原因はまだ解明されていません。気を付けたいのは、家庭環境や親のしつけなどが原因でADHDを発症するといった誤解が世間に出回っているので、惑わされないように注意してください。
大人のADHDとは、幼少期には症状が目立ず、大人になって症状が目立ってきたときに使われる表現です。学生時代までは症状があっても自分なりに工夫したり周囲が協力的に接してくれるお陰で症状が目立たないことがあります。
しかし社会人になると責任が生まれ、プレッシャーやストレスが大きくなって症状が目立ってくるのです。
本人としても今まで何も不自由なく生活できていたのに、社会人になってから「指示をすぐに忘れる」などの点を注意され、本来は能力があったとしても周囲からは「仕事ができない人」とレッテルを張られてしまうことがあります。
大人のADHDはどんな症状?
ADHDは注意欠如多動性障害の名前のとおり、その症状は「1. 注意が欠如する症状」や「2. 多動の症状」がメインになります。
ただし常にこの2つの症状が常に同時に併発するわけではありません。特に幼少期は「2. 多動の症状」が目立ち、授業に集中できずに立ってウロウロと歩く子どもがいます。
この「2. 多動の症状」は年齢を重ねると収まり、高校生の頃には目立たない人も多いです。そのため大人のADHDでは「1. 注意が欠如する症状」から起こる日常生活のトラブルが散見されます。具体的には、人の話を聞いていない、頼んだ仕事を忘れる、ケアレスミスが多い、などがあります。
大人のADHD治療法は?
現在は薬物治療が中心となっており、日本で承認されているアトモキセチンという薬や、メチルフェニデートを改良した精神刺激薬にあたるメチルフェニデート徐放剤を使用することが多いです。
薬物療法以外では認知行動療法も注目されています。グループで自己の疾患や症状や問題解決をみんなで話あって理解を深め、自分で症状をいかにコントロールするかを学ぶ治療法です。
ADHDかもと思ったら
ADHDであるかの自分でチェックするために使える、成人期のADHDの自己記入式症状チェックリスト(ASRS-v1.1)があります。気になるようであれば、一度チェックして受診の際に結果を持って行きましょう。ここでは代表的な質問を何点があげてみます。
ADHDとうまく付き合っていくには
自分がADHDであるとき
もしかすると自分はADHDかもしれないと感じたら、一度上記のセルフチェックを行ってから医療機関へ受診してみましょう。ADHDと診断を受けたとしたら、自分自身で疾患をしっかり理解して、日常生活や仕事で上手くいく工夫や調整を行うことを心がけていきましょう。その中で自分の特徴をどのようにすれば活かせるか、という視点を持つことが重要になります。
まわりにADHDの人がいるとき
家族や友人または同僚がADHDである場合、周囲の人は型にはまった対応ではなく、ADHDの症状を知ることで柔軟な対応が求められます。職場では、本人の特徴をどうポジティブに生かすことができるかをしっかり話し合って配慮や調整を行ってください。
最後に井上先生から一言
大人になってADHDと診断される方が増えてきました。仕事や日常生活で、自分がADHDかなと思ったら、一度精神科を受診してみてください。ただし診断名がつくことが大切なのでなく、本人も周囲も疾患の特徴を知り、どのように付き合って生活していくかを大切にしてください。
ADHDとギフテッドの違いなどについては、また別の記事でもご紹介いたします。